ARGX-113-2001試験/ADAPT-SC試験(国際共同第Ⅲ相試験)

「禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

試験概要

目的

gMG患者に対するヒフデュラ®の薬力学的作用のウィフガート®に対する非劣性を評価する

試験デザイン

ランダム化、非盲検、並行群間試験、多施設共同試験(欧州、米国、ロシア、日本の43施設)

対象

gMG患者111例(日本人8例)
ヒフデュラ®群:55例(日本人4例)、ウィフガート®群:56例(日本人4例)

※ 計111例の患者を組み入れ、ヒフデュラ®群に55例、ウィフガート®群に56例がランダム化された。安全性解析対象集団(SAF)、ITT集団、及びmITT集団はいずれも110例(各群55例)であった。

主な選択基準

  • gMGと診断され、以下のいずれかに該当する患者
    • 単線維筋電図検査又は反復神経刺激試験により、神経筋伝達異常が過去に確認された
    • 塩化エドロホニウム試験陽性が過去に確認された
    • 経口コリンエステラーゼ阻害薬投与後のMG徴候の改善が、主治医の評価で認められた
  • スクリーニング及びベースラインでのMG-ADL総スコアが5点以上であり、眼症状以外の項目でのスコアが50%を超えている患者
  • gMG治療薬(コリンエステラーゼ阻害薬、経口副腎皮質ステロイド及び/又は非ステロイド性免疫抑制剤)を一定の用量で使用している患者

投与方法

治験薬投与期の3週間後に、7週間の観察を行う10週間(1サイクル)で実施した。
ヒフデュラ®群:エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)として11,200単位を週1回計4回皮下投与
ウィフガート®群:10mg/kg を週1回計4回、1時間かけて静脈内投与
(両投与群ともに一定の用量で使用しているgMG治療薬と併用)

a:ヒフデュラ®の初回投与は治験責任医師が行った。ヒフデュラ®を投与された患者又はその介護者は、自身で投与するためのトレーニングを受けた。
患者又は介護者が投与できると判断された場合、2回目(1週目)から現場スタッフ監督の下、現場で治験薬を投与することが認められた。
b:フォローアップ期間は、毎週訪問する8週目までと、8週目から試験終了(10週目)までの2週間の期間で構成された。

評価項目

【主要評価項目】

総IgG濃度のベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までの変化率(検証項目)

【副次評価項目(臨床的有効性)】

  • MG-ADLレスポンダー※1の割合
  • QMGレスポンダー※2の割合
  • ベースラインからのMG-ADL総スコアの変化量の推移
  • ベースラインからのQMG総スコアの変化量の推移

※1 最終投与から1週間後までにMG-ADL総スコアがベースラインから2点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された患者
※2 最終投与から1週間後までにQMG総スコア(肺活量がグレードFの場合、最悪値3点で補完した値)がベースラインから3点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された患者

【探索的及びその他の評価項目】

  • ヒフデュラ®群で自己投与/介護者支援投与のトレーニングを完了した患者/介護者数及び割合
  • ヒフデュラ®群で自己投与/介護者支援投与を行うのに十分な能力があると実施医療機関のスタッフに判断された患者/介護者数及び割合
  • ヒフデュラ®群で実施医療機関のスタッフの監督下で自己投与/介護者支援投与した患者/介護者数及び割合
  • MSEの定義に合致した患者の割合

【その他】

安全性、薬物動態、薬力学、免疫原性

解析方法

【主要評価項目】

投与群を因子、ベースラインの総IgGを共変量とした共分散分析(ANCOVA)モデルで解析した。非劣性、総IgGのベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までの変化率に基づき、10%の非劣性マージンを用いて評価した。

【副次評価項目、探索的評価項目】

副次評価項目及び探索的評価項目は、投与群別及び全患者について記述統計量により要約した。
臨床的有効性の解析はITT集団を対象に行った。薬力学的作用の解析は、mITT集団を対象に行った。

【その他】

全般的な患者特性、安全性及び免疫原性の解析は、SAFを対象に行った。薬物動態の解析は、薬物動態解析集団を対象に行った。有害事象及び臨床検査値異常は、治験薬による治療下で発現したもののみを集計した。

患者背景

患者背景及びベースラインの疾患特性

日本人例数10例未満のため(%)は記載していない

有効性評価

主要評価項目

総IgG濃度のベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までの変化率

総IgG濃度のベースラインから4週目までの変化率は、ヒフデュラ®群で−66.4%、ウィフガート®群で−62.2%でした。
投与群間での最小二乗平均差(95%信頼区間)は−4.2%(−7.73、−0.66)であり、信頼区間の上限値(−0.66%)は、予め設定した非劣性マージン10%より低く、ヒフデュラ®はウィフガート®に対し非劣性でした[p<0.0001、投与群を因子、ベースラインの総IgGを共変量とした共分散分析(ANCOVA)](検証的な解析結果)。

 

総IgG濃度のベースラインから4週目(治験薬最終投与1週間後)までの変化率a,b)

a) 最小二乗平均値±標準誤差
b) 投与群を要因、ベースラインの総IgG濃度を共変量とした ANCOVAによる解析
c) 非劣性の仮説検定に対するp値(非劣性マージン10%、有意水準片側2.5%)
d) 4週目時点の総IgG濃度が得られなかった被験者(本剤群2例、点滴静注製剤群3例)及び試験期間中に治験薬の投与が中止され、最終投与時点から7日後の総IgG濃度が得られなかった被験者(本剤群3例)は除外された。

副次評価項目

MG-ADLレスポンダーの割合

抗AChR抗体陽性集団におけるMG-ADLレスポンダー*1の割合は、ヒフデュラ®群が32例/45例(71.1%)、ウィフガート®群が33例/46例(71.7%)でした。 抗AChR抗体陰性集団におけるMG-ADLレスポンダーの割合は、ヒフデュラ®群が6例/10例、ウィフガート®群が5例/9例でした(非提示)。

*1 最終投与から1週間後までにMG-ADL総スコアがベースラインから2点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された患者

抗AChR抗体陽性集団におけるMG-ADLレスポンダーの割合*2

全体集団におけるMG-ADLレスポンダーの割合は、ヒフデュラ®群、ウィフガート®群とも38例/55例(69.1%)でした。

全体集団におけるMG-ADLレスポンダーの割合*2

*2 解析対象:intent-to-treat(ITT)集団

副次評価項目

MG-ADL総スコアのベースラインからの変化量の推移

抗AChR抗体陽性集団におけるベースラインからのMG-ADL総スコアの変化量の推移は下図のとおりでした。

抗AChR抗体陽性集団におけるベースラインからのMG-ADL総スコアの変化量の推移

全体集団におけるベースラインからのMG-ADL総スコアの変化量の推移は下図のとおりでした。

全体集団におけるベースラインからのMG-ADL総スコアの変化量の推移

*解析対象:ITT集団

副次評価項目

QMGレスポンダーの割合

抗AChR抗体陽性集団におけるQMGレスポンダー*1の割合は、ヒフデュラ®群が28例/45例(62.2%)、ウィフガート®群が25例/45例(55.6%)でした。
抗AChR抗体陰性集団におけるQMGレスポンダーの割合は、ヒフデュラ®群が4例/10例、ウィフガート®群が5例/9例でした(非提示)。

*1 最終投与から1週間後までにQMG総スコア(肺活量がグレードFの場合、最悪値3点で補完した値)がベースラインから3点以上減少し、かつその減少が連続して4週間以上維持された患者

抗AChR抗体陽性集団におけるQMGレスポンダーの割合*2

全体集団におけるQMGレスポンダーの割合は、ヒフデュラ®群が32例/55例(58.2%)、ウィフガート®群が30例/54例(55.6%)でした。

全体集団におけるQMGレスポンダーの割合*2

*2 解析対象:ITT集団

副次評価項目

ベースラインからのQMG総スコアの変化量の推移

抗AChR抗体陽性集団におけるベースラインからのQMG総スコアの変化量の推移は下図のとおりでした。

抗AChR抗体陽性集団におけるベースラインからのQMG総スコアの変化量の推移

全体集団におけるベースラインからのQMG総スコアの変化量の推移は下図のとおりでした。

全体集団におけるベースラインからのQMG総スコアの変化量の推移

※スパイロメトリーのグレードF(スパイロメトリーによる肺活量の評価ができない状態)は報告されたQMG総スコアに基づいており、肺活量は最低スコア3とみなされなかった。
*解析対象:ITT集団 

副次評価項目

ベースラインからの総IgG濃度の変化率の推移

抗AChR抗体陽性集団におけるベースラインからの総IgG濃度の変化率の推移は下図のとおりでした。

抗AChR抗体陽性集団におけるベースラインからの総IgG濃度の変化率の推移

全体集団におけるベースラインからの総IgG濃度の変化率の推移は下図のとおりでした。

全体集団におけるベースラインからの総IgG濃度の変化率の推移

※免疫グロブリン療法又は血液浄化療法を受けた後の評価は除外された。
*解析対象:ITT集団

副次評価項目

抗AChR抗体陽性集団における抗AChR抗体のベースラインからの変化率の推移

抗AChR抗体陽性集団における抗AChR抗体のベースラインの平均値(標準誤差)は、ヒフデュラ®群とウィフガート®群でそれぞれ48.2(15.9)nmol/L、74.8(34.2)nmol/Lであり、ベースラインからの変化率の推移は下図のとおりでした。

抗AChR抗体陽性集団における抗AChR抗体のベースラインからの変化率の推移

*解析対象:mITT集団

探索的評価項目

  • ヒフデュラ®群で自己投与/介護者支援投与のトレーニングを完了した患者/介護者数及び割合
  • ヒフデュラ®群で自己投与/介護者支援投与が可能と実施医療機関のスタッフに判断された患者/介護者数及び割合
  • ヒフデュラ®群で実施医療機関のスタッフの監督下で自己投与/介護者支援投与した患者/介護者数及び割合

ヒフデュラ®群55例中54例の患者又はその介護者がヒフデュラ®の自己投与/介護者支援投与のトレーニングを受け、42例(76.4%)が、ヒフデュラ®の自己投与/介護者支援投与が可能と判断されました。

そのうち、1回のトレーニングで自己投与/介護者支援投与が可能と判断されたのは、42例中24例(57.1%)でした。

上記のヒフデュラ®の自己投与/介護者支援投与が可能と判断された42例のうち、23例が実施医療機関スタッフの監督下で少なくとも1回は自己投与/介護者支援投与を実施しました。

自己投与/介護者支援投与が可能と実施医療機関のスタッフに判断された患者/介護者数及び割合

※治験時は薬液採取には注射針、投与時には翼状針を使用したため、薬事承認後と使用機器が異なる。

その他の評価項目

MSEの定義に合致した患者の割合

抗AChR抗体陽性集団における試験期間中のいずれかの時点でMSEの定義に合致した患者の割合は、ヒフデュラ®群が45.5%、ウィフガート®群が41.3%でした。

抗AChR抗体陽性集団におけるMSEの定義に合致した患者の割合

全体集団における試験期間中のいずれかの時点でMSEの定義に合致した患者の割合は、ヒフデュラ®群が37.0%、ウィフガート®群が38.2%でした。

全体集団におけるベースラインからの総IgG濃度の変化率の推移

*最小のMG-ADL総スコアが0又は1点となった患者

免疫原性の結果1)

エフガルチギモドに対する抗薬物抗体(ADA)及び中和抗体、並びにボルヒアルロニダーゼに対する抗体は、エフガルチギモドの薬物動態、薬力学的作用、臨床的有効性及び安全性パラメータに明らかな影響を与えませんでした。

エフガルチギモドに対するADAの発現割合は、ヒフデュラ®群で34.5%、ウィフガート®群で20.0%でした。エフガルチギモドに対する中和抗体の発現割合は、両群とも3.6%でした。

ヒフデュラ®群では、ボルヒアルロニダーゼに対する抗体の発現割合は5.5%であり、ボルヒアルロニダーゼに対する中和抗体は検出されませんでした。

エフガルチギモドに対するADAの発現割合と中和抗体の発現割合

1)社内資料:免疫原性(2024年1月承認、CTD2.7.2.4.1)

安全性評価

  • 全体集団における有害事象はヒフデュラ®群で55例中37例(67.3%)、ウィフガート®群で55例中28例(50.9%)に認められました。
  • 主な有害事象(5%以上に発現)は、ヒフデュラ®群で注射部位発疹が8例(14.5%)、頭痛、注射部位紅斑が各7例(12.7%)、重症筋無力症が6例(10.9%)、注射部位そう痒感が5例(9.1%)、注射部位内出血が4例(7.3%)、注射部位疼痛が3例(5.5%)、ウィフガート®群で頭痛が7例(12.7%)、下痢、疲労、尿路感染、挫傷、転倒が各3例(5.5%)でした。なお、ヒフデュラ®群では、局所の注射部位反応関連事象が21例(38.2%)に発現しましたが、いずれもグレード1又はグレード2であり、また、重篤ではありませんでした。これらの事象は治療を制限するものではなく、治験薬の投与中止には至りませんでした。
  • 重篤な有害事象は、ヒフデュラ®群で重症筋無力症が3例、視神経炎·重症筋無力症、上腕骨骨折·重症筋無力症、呼吸困難、蜂巣炎、失神が各1例、ウィフガート®群で重症筋無力症、うっ血性心不全、胸痛·呼吸困難、精巣嚢胞が各1例でした。両群で認められた重症筋無力症の大半は、エフガルチギモドが投与されない7週間のフォローアップ期の終了に近い時期に報告されていました。また、全ての重篤な有害事象は治験担当医師によりエフガルチギモドとの因果関係が否定されました。
  • 投与中止に至った有害事象は、ヒフデュラ®群でCOVID-19、重症筋無力症が各1例認められました。
  • 本試験では、死亡例は認められませんでした。

*重症筋無力症の新規発現ではなく、重症筋無力症の増悪を示す。

治験薬との因果関係が否定できない有害事象

社内資料:第Ⅲ相試験(ARGX-113-2001試験)(2024年1月承認、CTD2.7.6.3)(EFG90050)
社内資料:日本人集団の結果(2024年1月承認、CTD2.7.3.3.3.2)(EFG90057)
社内資料:2001試験(第3相試験:エフガルチギモドPH20 SC又はエフガルチギモドIV)(2024年1月承認、CTD2.7.3.2.1)(EFG90053)
社内資料:総IgGのベースラインからの変化(2024年1月承認、CTD2.5.4.1)(EFG90049)
社内資料:自己投与(2024年1月承認、CTD2.7.4.5.2.2)(EFG90059)

JP-VDJMG-23-00005(2024年1月作成)