ARGX-113-1705試験/ADAPT+試験(国際共同第Ⅲ相継続投与試験)

試験概要

目的

gMG患者にウィフガート®を最長3年間投与した際の安全性、忍容性及び有効性を評価する

デザイン

国際共同第Ⅲ相試験(ARGX-113-1704試験、ADAPT試験)の継続投与試験、長期、単群、非盲検、多施設共同(欧州、 米国、カナダ、ロシア、日本)

対象

ADAPT試験に参加し、ADAPT+試験に移行して1回以上ウィフガート®を投与されたgMG患者145例

主な選択基準

  • ADAPT試験に参加した患者で本試験に移行するための適格性基準に合致していることとした。
    • ADAPT試験の試験終了時である26週目(Day 182)まで試験を継続した患者
    • ADAPT試験で次のサイクルを開始する基準に合致したが、同試験の期間中に治療サイクルを完了できなかった患者
    • ADAPT試験期間中に、妊娠、レスキュー療法又は重篤な有害事象以外の理由で割り付けられた治療を早期中止した患者
    • ADAPT試験で割り付けられた治療を一時中断した患者
  • 試験参加前に1剤以上のベースライン治療(コリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド剤及び/又は非ステロイド性免疫抑制剤※1を一定の用量で継続している患者

※1:アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル及びシクロホスファミド(*:MGの治療としては、本邦未承認)。

投与方法

  • ウィフガート®投与期において、コリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド剤及び/又は非ステロイド性免疫抑制剤※1投与下で、ウィフガート® 10mg/kgを1週間間隔で計4回1時間かけて静脈内投与した。なお、ADAPTにおいては併用薬の変更はできなかったが、ADAPT+においては併用薬の変更が可能であった。
  • 最初の1年間は、先行のサイクル投与から4週間以上経過し、基準※2に合致した場合は、次のサイクルを開始することが可能とした。 
  • 2年目以降は、先行のサイクル投与から4週間以上経過し、医師の判断により次のサイクルを開始することが可能とした(最長3年間)。

※2:次のサイクル投与は、臨床症状として以下の基準のいずれも合致した場合に、開始することとした。
・MG-ADL総スコアが合計5以上であり、眼症状以外の項目でのスコアが50%を超えている患者
・MG-ADL総スコアがベースラインに対して2以上の減少が認められない患者

評価項目

安全性評価

有害事象、重篤な有害事象の発現割合及び重症度、臨床検査値 など

有効性評価

サイクル毎のベースライン(ウィフガート®初回投与日)と比較したMG-ADL総スコアの変化量(抗AChR抗体陽性患者、全体集団)、サイクル1~10(Week 3)のMG-ADL改善スコア別の患者の割合(抗AChR抗体陽性患者、全体集団) など

薬力学評価

サイクル毎の総IgG濃度変化率(抗AChR抗体陽性患者、全体集団) など

免疫原性

抗薬物抗体(ADA)陽性の患者の割合 など

解析計画

ウィフガート®を1回以上投与された安全性解析対象集団を対象に解析した。安全性は、記述統計量により要約した。有効性は、抗AChR抗体陽性患者、抗AChR抗体陰性患者及び全体集団のMG-ADL総スコアの絶対値及びベースラインからの変化量について要約統計量を示した。

また、ADAPT試験及びADAPT+試験で1年以上の追跡調査を行った抗AChR抗体陽性患者を対象に、治療サイクル間隔について事後解析した。最終中間解析のデータカットオフは2022年1月31日とした。

※3:治験薬投与期3週間及びフォローアップ期5週間を1サイクルとして、最大3サイクル(最長26週間)行った。
※4:治験薬投与期3週間及びサイクル間観察期4週間以上を1サイクルとして、最長156週間(3年間)行った。

患者背景

先行するADAPT試験(二重盲検試験)に組み入れられた167例(日本人15例)のうち、2022年1月時点で151例がADAPT+試験に移行し、145例が1回以上ウィフガート®を投与されました。このうち、ADAPT試験のウィフガート®群が77例、プラセボ群が68例でした。
145例の全体集団のうち、111例は抗AChR抗体陽性、34例は抗AChR抗体陰性でした。ベースラインの患者背景は、各群で同様でした。

ADAPT+試験ベースライン時の患者背景(安全性解析対象集団)

有効性評価

サイクル毎のMG-ADL総スコア変化量(2022年1月31日データカットオフ時点)

サイクル毎のMG-ADL総スコア変化量の推移は下図の通りで、サイクル投与を繰り返しても同様でした。
抗 AChR抗体陽性患者における、Week 3(4回目の投与時)の MG-ADL総スコアの平均変化量(標準誤差)は、サイクル1では-5.0(0.3)、サイクル2~10では-5.3~-7.5でした。

抗AChR抗体陽性患者のサイクル1~10(Week 3)のMG-ADL/QMG改善スコア別の患者の割合
(2022年1月31日データカットオフ時点)

ADAPT+試験のサイクル1~10(Week 3)及びADAPT試験のサイクル1(Week 3)のプラセボでの、抗AChR抗体陽性患者におけるMG-ADL/QMG改善スコア別の患者の割合は、下図の通りでした。
サイクル1~10(Week 3)でCMIを示した患者の割合の中央値は、MG-ADLでは88.7%、QMGでは64.4%でした。

破線:MG-ADLのCMIはMG-ADL総スコアの2点以上、QMGのCMIはQMG総スコアの3点以上の減少と定義した。

安全性評価

有害事象(全体集団)(2022年1月31日データカットオフ時点)

試験期間(治療及び追跡調査期間)の平均は548日で、217.55人年に相当しました。最大17サイクルのウィフガート®の投与を受けました。全体集団における有害事象は145例中123例(84.8%)に認められました。主な有害事象は頭痛が36例(24.8%)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)※1が22例(15.2%)、鼻咽頭炎が20例(13.8%)でした。
重篤な有害事象は34例(23.4%)52件に認められました。主な重篤な有害事象は、重症筋無力症の増悪が7例(4.8%)、重症筋無力症クリーゼ、急性呼吸不全、COVID-19、COVID-19肺炎、肺炎が各2例(1.4%)でした。投与中止に至った有害事象は12例(8.3%)14件に認められました。
死亡例は、急性心筋梗塞、重症筋無力症クリーゼ、死亡、肺の悪性新生物、COVID-19による敗血症性ショックが各1例で認められ、いずれもウィフガート®との因果関係は関連なしと判断されました。
特に注目すべき有害事象と定義した、感染症の有害事象は80例(55.2%)164件に認められました。

有害事象(安全性解析対象集団、全体集団)

※1:COVID-19、COVID-19肺炎、コロナウイルス感染症、SARS-COV-2検査陽性を含む。
※2:発現率は、追跡調査中の1人年あたりの件数として算出した。

有害事象のサイクル毎の発現時期(全体集団)(2022年1月31日データカットオフ時点)

全体集団における、有害事象のサイクル毎の発現時期は、下図の通りでした。

副次評価項目

臨床検査値(全体集団)(2022年1月31日データカットオフ時点)

ウィフガート®投与による血中アルブミン値の低下、総コレステロール値及びLDLコレステロール値の上昇は認められませんでした。

薬力学評価

サイクル毎の総IgG濃度変化率

抗AChR抗体陽性患者における、サイクル毎の総IgG濃度変化率の推移は下図の通りで、サイクル投与を繰り返しても同様でした。
すべてのサイクルにおいて、総IgG濃度変化率は、ウィフガート®投与期間中に低下し、7週後から11週後の間にはベースラインに戻りました。
サイクル1では、総IgG濃度変化率の平均は最大で抗AChR抗体陽性患者では55.9%、全体集団では57%低下しました。

ウィフガート®は各患者の臨床症状により治療サイクルを判断する必要があるため、本事後解析の結果を紹介する。

事後解析:ADAPT試験及びADAPT+試験で1年以上の追跡調査を行った、抗AChR抗体陽性患者の治療サイクル間隔(2022年1月31日データカットオフ時点)

ADAPT試験及びADAPT+試験で1年以上の追跡調査を行った抗AChR抗体陽性患者95例において、治療サイクル数の平均値は4.7サイクル/年、中央値[範囲]は5.0[0.5-7.6]サイクル/年でした。
サイクル間隔(先行サイクルの最終投与から次のサイクルの初回投与まで)の平均期間は、6週未満が36%、6週以上9週未満が27%、9週以上が37%でした。9週以上の症例において、年間3サイクル以下は24%、2サイクル以下は18%、1サイクルのみは6%でした。

ウィフガート®点滴静注400mg電子添文における用法及び用量に関連する注意(抜粋):7.1 次サイクル投与の必要性は、臨床症状等に基づき、判断すること。

免疫原性

免疫原性(2022年1月31日データカットオフ時点)

全体集団におけるウィフガート®投与後の抗薬物抗体(ADA)陽性の患者の割合は、15.9%(22/138例)で、そのうち18例は投与開始前から陽性でした。

まとめ

ADAPT+試験では、gMG患者145例にウィフガート®が投与され、治療期間と追跡調査期間をあわせて平均548日の長期投与のデータが得られました(2022年1月31日データカットオフ時点)。その結果、ウィフガート®を長期間にわたり治療サイクルを繰り返しても、既存の有害事象の増加や新たな有害事象は認められませんでした。

Howard JF Jr, et al.: Front. Neurol., 17 January 2024、DOI 10.3389/fneur.2023.1284444
Singer M, et al.: Muscle Nerve. 2024; 69(1): 87‒92.

JP-VJMG-24-00211(2024年5月作成)