重症筋無力症(MG)は神経筋接合部(NMJ)のシナプス後膜上にある標的抗原に対して、病原性のある免疫グロブリンG(IgG)自己抗体が作用することにより、NMJの刺激伝達が障害されて生じる自己免疫疾患です。
gMG患者さんにとって疾患による身体的·精神的な負担は重く、生命予後に関わることもあります3)。
重症筋無力症(MG)は神経筋接合部(NMJ)のシナプス後膜上にある標的抗原に対して、病原性のある免疫グロブリンG(IgG)自己抗体が作用することにより、NMJの刺激伝達が障害されて生じる自己免疫疾患です。
gMG患者さんにとって疾患による身体的·精神的な負担は重く、生命予後に関わることもあります3)。
筋力低下により、運動機能障害や構音障害、嚥下障害、視覚障害、易疲労性等の症状が生じる。
15~20%の患者さんがクリーゼを経験する。致命的な呼吸不全に陥る可能性もある。
病原性が認められているIgG自己抗体として、アセチルコリン受容体抗体(AChR抗体)(約80~85%)と筋特異的受容体型チロシンキナーゼ抗体(MuSK抗体)(約5%)が存在します。
残りの10~15%はダブルセロネガティブMGに分類され、検出感度以下のAChR抗体やLRP4抗体※の関与などが想定されます。
※ LDL受容体関連蛋白質4 (LRP4)自己抗体も候補に挙げられていますが、現時点ではMGの原因となる自己抗体であるかはわかっていません
約80~85% | 抗AChR抗体陽性MG |
---|---|
約5% | 抗MuSK抗体陽性MG |
約10~15% | ダブルセロネガティブMG(AChR抗体及びMuSK抗体陰性) |
日本神経学会監修:重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン2022, 2022, 南江堂
重症筋無力症(MG)は、神経筋接合部のシナプス後膜上の分子に対する自己抗体(IgG自己抗体)の作用により、神経筋接合部の刺激伝達が障害されて生じる自己免疫疾患です。AChRに対するIgG自己抗体による神経伝達阻害のメカニズムには以下の3つがあります。
1) Hehir MK, Silvestri NJ. Neurol Clin. 2018;36(2):253-260.
2) Gilhus NE, et al. Nat Rev Neurol. 2016;12(5):259-268.
3) Roopenian DC, Akilesh S. Nat Rev Immunol. 2007;7(9):715-725.
4) Ward ES, Ober RJ. Trends Pharmacol Sci. 2018;39(10):892-904.
5) Huijbers MG, et al. J Intern Med. 2014;275(1):12-26.
6) Mantegazza R, et al. Neuropsychiatr Dis Treat. 2011;7:151-160.
7) Koneczny I, Herbst R. Cells. 2019;8(7):671.
8) Koneczny I et al.: J Autoimmun. 2017 Feb;77:104-115.
新たな研究で、抗AChR抗体は3つの神経伝達障害メカニズムのうちの複数を媒介することがあることが示されました。
1つの発症機序のみを標的とする治療アプローチは、多面的な能力を有する自己抗体によって回避される可能性が示唆されます。
試験方法:AChR抗体陽性のMG患者の末梢B細胞サンプル36検体を、細胞培養系を用いてAChR特異的IgGをスクリーニングし、個々のIgGのサブユニット特異性と病態形成能との関連を解析した。
Minh C Pham et al.: Acta Neuropathol. 2023; 146(2): 319-336.
[COI] 著者にargenx社よりコンサルタント料等を受領している者が含まれる。
FcRnは主として細胞内に局在し、細胞内に取り込まれたIgG自己抗体を含むIgGとエンドソーム内(酸性条件下)で結合して、IgG自己抗体を含むIgGがリソソームに輸送されて分解されるのを抑制し、細胞外に再度放出(リサイクル)します。FcRnは、この機序によりIgG自己抗体を含むIgGの血中濃度を維持します1,2,3)。
FcRnはIgGのほかに、アルブミンのリサイクリング等も担いますが、アルブミンとIgGの結合部位の違いから、IgGとアルブミンは拮抗することなくFcRnに結合します2,3)。
1)Ulrichts P, et al. J Clin Invest. 2018;128(10):4372-4386
[COI] 本試験はargenx社の支援のもと行われた。著者にargenx社よりコンサルタント料等を受領している者が含まれる。また、著者にargenx社の社員が含まれる。.
2)Ward ES, et al.: Front Immunol. 2022; 13.
3)Anderson CL, et al.: Trends Immunol. 2006; 27(7): 343-348
さらに詳しいMGの病態におけるIgG自己抗体のメカニズムについては動画をご覧ください。
【再生時間】3分43秒
1) Gilhus NE. Myasthenia gravis. N Engl J Med. 2016;375 (26):2570-2581.
2) Koneczny I, Herbst R. Myasthenia gravis: pathogenic effects of autoantibodies on neuromuscular architecture. Cells. 2019;8(7):671.
3) Ludwig RJ, Vanhoorelbeke K, Leypoldt F, et al. Mechanisms of autoantibody-induced pathology. Front Immunol. 2017 May 31;8:603.
4) Ward ES, Ober RJ. Targeting FcRn to generate antibody-based therapeutics. Trends Pharmacol Sci. 2018;39(10):892-904.
5) Pyzik M, Sand KMK, Hubbard JJ, Andersen JT, Sandlie I, Blumberg RS. The neonatal Fc receptor (FcRn): a misnomer? Front Immunol. 2019;10:1540.
6) Waldmann TA, Strober W. Metabolism of immunoglobulins. Progr Allergy. 1969;13:1-110.
7) Liu L, García AM, Santoro H, et al. Amelioration of experimental autoimmune myasthenia gravis in rats by neonatal FCR blockade. J Immunol. 2007;178(8):5390-5398.
JP-VJP-23-00661(2023年11月作成)